ICIAM 2023 市民講演会

第10回国際産業数理・応用数理会議(ICIAM 2023)は、「人類の持続的発展を支える産業数理・応用数理」をメインテーマに、「科学技術計算と数値計算」、「精度保証付き数値計算」、「行列と固有値問題の解法とその応用」、「有限要素法の数理とその応用」、「カオスとその応用」、「可積分系とその応用」、「機械学習とAI」、「産業における応用数理」、「医学に関わる数理」、「生物生命に関わる数理」等を主要題目として、研究発表と討論が行われます。
この会議期間中に、『ICIAM 2023 市民講演会』を開催し、講演者の杉原厚吉明治大学先端数理科学インスティテュート研究特別教授より「絵から飛び出した不可能立体の世界」と題して、視点位置の制限が強くない不可能立体の世界についてお話します。また、三谷純筑波大学システム情報系教授からは、「折り紙の可能性:芸術、数学、そして工学への応用」と題し、日本の伝統的な芸術形式である「折り紙」について、曲面を持つ作品の作り方を紹介し、最後には曲線で折る折り紙を参加者の皆さんに体験してもらいます。

<イベント概要>

  • 開催日時:
    1. 令和5年(2023年)8月20日(日)13:20〜16:30
    2. 令和5年(2023年)8月23日(水)13:20〜15:00
  • 開催地:早稲田大学 国際会議場(下記地図内 [B])
    〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1丁目20−14(Map
  • 対象:一般
  • 定員:現地参加 450名
  • 申込方法:当日開催地にお越しください
  • プログラム:下記参照

【8月20日】市民講演会1

[13:20-14:30] 杉原 厚吉 先生

明治大学先端数理科学インスティテュート 研究特別教授

題目

絵から飛び出した不可能立体の世界

概要

不可能立体は、オランダの版画家エッシャーなどが絵で描いたことで有名ですが、ここでは本当の立体を使って表現できることを紹介します。これは、目の錯覚の仕組みを数理モデルで明らかにしようとする研究の成果です。得られる錯覚はとても強く、両目で見ても、視点位置を少しぐらい動かしても、あり得ない立体を見ているという印象は消えません。
不可能図形のだまし絵を立体化する方法は以前からいくつか知られていましたが、その方法で作った立体は、特別な視点位置から片方の目だけで見ないと成立しないものでした。それでは、立体とは言っても絵の延長と言わざるを得ませんでした。それに対してここで紹介する不可能立体は、視点位置の制限が強くありません。これによって、不可能立体の世界が、絵から実在する立体へ真に飛び出したと言っていいでしょう。

プロフィール

1973年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、電子技術総合研究所、名古屋大学、東京大学などを経て、2009年より明治大学へ着任し、2019年4月より現職。専門は数理工学。ロボットの目を開発する研究の中で、不可能図形のだまし絵を立体化する手法を見つけ、立体錯視の分野へも研究を広げてきた。さまざまな不可能立体を創作し、立体錯視アーティストとしても活躍している。国際ベスト錯覚コンテスト優勝4回。錯視立体作品は、2018年9月より2020年5月までの1年8ヶ月にわたって台湾の国立故宮博物院で特別展示されるなど、多くの科学館・美術館で展示の実績を持つ。

[14:45-15:30] 菊池 昇 先生

トヨタコンポン研究所 所長
豊田理化学研究所常務取締役
ミシガン大学 機械工学 Roger L. McCarthy 名誉教授

題目

自律型オートメーションに向けた自動車産業における、応用数学がもたらす安全性とフィールセーフティ

[15:45-16:30] パドマナブハン・セシャイヤー先生

ジョージ・メイソン大学 教授

題目

応用数学の研究と教育における、正義・公平性・多様性・包摂(JEDI)の重要性を世界全体で理解する

【8月23日】市民講演会2

[13:20-15:00] 三谷 純先生

筑波大学システム情報系 教授

題目

折り紙の可能性:芸術、数学、そして工学への応用

概要

「折り紙」は、日本の伝統的な芸術形式であり、深い歴史を持っています。折り鶴やだまし舟などのシンプルで美しい作品は、このアートの象徴でしょう。しかしながら、折り紙はその美しさだけでなく、その複雑さと数学的な側面によっても注目されています。また、折りたたむという折り紙の特長は、工学的にも役立つ機能であるため、産業への応用も期待されています。本講演では、折り紙の歴史的背景を探るとともに、折り紙がどのようにして数学と結びつき、また産業への応用が進められているかを解説します。さらに、コンピュータを活用した折り紙デザインの進化についても触れます。講師がこれまでに取り組んできた、曲面を持つ造形を作り出す方法を紹介し、講演の最後には曲線で折る折り紙を参加者の皆さんに体験していただきます。

プロフィール

筑波大学システム情報系教授。2004年東京大学大学院博士課程修了、博士(工学)。2015年より現職。コンピュータグラフィックス分野における形状モデリングに関する研究を専門とし、曲面を含む立体折紙の設計などを行っている。